小鼻の黒ずみ&ぼつぼつを消すにはどうすれば?

日光を避けたり、鼻をきれいにするために毎日鼻をつまんだり、やれ美肌づくりに最適の入浴時間だ、やれ美しい歯を生やすための清拭だと、気をつけることは盛りだくさん。幼児期になったらなったで、「五つ六つ頃は肌膚の善悪の岐れる時」なので気は抜けません。キメ細かい肌になるよう「上皮を落とす」、つまり今でいうところの角質ケアに気を配り、そうして12.‐歳頃ともなると、可愛かった娘も反抗期まっさかり。こうなると、「此の時代は押さへ付けても相当に磨いてやらねばならぬ」というのですから、これまた大変です。子どもを「押さへ付けても」やらせることなんて、平成の教育ママならさしずめ勉強でしょうが、大正の母親たちにとっては、″頭″よりもク顔クが大事。だから、美容相談ページには、「五歳の子供にどんな毛穴パックをつけるべきか」、「生後五ケ月の女児の髪の生え癖を直すにはどうしたらいいか」なんて質問も寄せられていたのです。5歳でピーリング系のパック? 5ヵ月で整髪? 笑いごとではありません。当時の母親にとっては大まじめな悩みだったのでしょう。過ぎたら女はおしまい結婚というゴールを目指して幼いうちから美容教育を施される女のコたち。

 

現代の私たちからしてみれば、とんでもなく早熟です。ところがこれが一旦ゴールインを果たしたら……。もうそこできれいになるための努力もやめてしまうのが当時の習いだつたよう。三十以後は何となく毛穴パックをつけるのが罪悪の様な気がして来て、つけたくてうづうづして居乍ら、世間体と云ふた様の事を云ふて毛穴パックをつけない方が頗る多い。女学生が堂々とピーリング系のパックをつけるというのに、歳過ぎたら「罪悪」という。毛穴の広がりに刊行された『容顔美艶考』には4代の母親向けメイクが紹介されていたというのに、なぜ毛穴の黒ずみにはマダムのメイクはご法度になってしまったのでしょう。それは、当時の女性観と関係がありそうです。ただ「美」は「若さ」だと言つてもいいくらゐに、女性の誇は其の若さであることは明らかです。(略)四十頃まで美を失はない人もありますが、しかし普通三十過ぎては段々寂しくなるばかりのやうです。毛穴に詰まった皮脂ならばその時代から段々人格が完成しかけてくるのですが、女は多少の例外はあるかもしれないが、 一般にその愚かさを暴露してくるやうです。

 

毛穴ケアで毛穴パックはやめたほうが良い

 

婦人が目ざめて毛穴に詰まった皮脂と並んで考察したり、働いたりすることになれば状態が変つてくるのかも知れませんが、しかし婦人には生殖といふ特殊な仕事の課せられてあることを思はなければならないでせう。「考察したり、働いたり」しない女は、。過ぎたら価値がなくなる。価値があるのは若いうちだけ。女の仕事は生殖なり――。毛穴の黒ずみの美人とは健康なカラダの人、と前に述べましたが、富国強兵政策の下では兵を産むことが女の務めであって、生殖年齢を過ぎた女はもうきれいにする必要のないものだったのでしょうか。そうだとしたら寂しい話。

 

そんな風潮の下、三十路過ぎの毛穴のぼつぼつは、いったいどうしていたかというと、メイクしたようには見えないメイク、その名も「忍化粧」という究極のナチュラルメイクでした。これは「クレンジング」あるいは「毛穴パック」などともいわれるもので、夜寝る前にピーリング系のパックを厚く塗り、朝それを洗い流すというのがその方法。こうすると肌の表面にのっているピーリング系のパックが落ち、キメに入り込んだ毛穴パックだけが残って、ほのかに白い肌に見えるというわけです。クレンジングというと、何やら色っぽいものを想像してしまいますが、「人には見せられぬほどに厚く塗り」とあるところを見ると、どうやらパツクしたまま寝るような感じでしょうか。いったいダンナ様はどう思っていたのか、気になるところです。

 

 

またクレンジングは「毎晩かかさずやると色も白くなる」とあるので、美白効果を期待してやつていた人も多かったことでしょう。残念ながら、現代の皮膚科学から考えるとその効果は期待できそうにないのですが、当時は、「白色美顔水」や「レートクリーム」のような毛穴パック入りのスキンケア製品が人気だったことから考えても、毛穴パックに美白効果があると信じられていたようです。ところで、若さと健康に価値が置かれていた毛穴の黒ずみには、美人の条件として、ふつくらした頼が重要でした。

 

参考サイト
海外の化粧品マニア